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大阪高等裁判所 昭和48年(行コ)7号 判決

奈良市下三条町四九一番地

控訴人

浅川ハーベストビル(株)

(旧商号・奈良観光ホテル(株))

右代表者代表取締役

浅川実

右訴訟代理人弁護士

和島岩吉

西中務

大深忠延

高階叙男

同市登大路町八一番地

被控訴人

奈良税務署長

藤井修

右指定代理人

麻田正勝

辻井治

中村治

城尾宏

杉山幸雄

右当事者間の法人税更正決定取消請求控訴事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実

第一当事者双方の求める裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が昭和三六年一二月二七日付をもつて控訴人の(イ)昭和三二年一〇月一日から昭和三三年九月三〇日まで、(ロ)昭和三三年一〇月一日から昭和三四年九月三〇日まで、(ハ)昭和三四年一〇月一日から昭和三五年九月三〇日までの各事業年度分の法人税についてなした各所得金額等の更正および重加算税賦課決定(ただし、各事業年度分につき大阪国税局長が審査決定によりすでに取り消した部分を除く。)は、いずれもこれを取り消す。

3(一)(主位的申立)

被控訴人が昭和三六年一二月二七日付をもつて控訴人の昭和三五年一〇月一日から昭和三六年九月三〇日までの事業年度分の法人税についてなした所得金額等の更正および過少申告加算税賦課決定は、これを取り消す。

(二)(予備的申立)

被控訴人が昭和四〇年七月三一日付をもつて控訴人の右事業年度分の法人税についてなした所得金額等の再更正および重加算税賦課決定は、これを取り消す。

4  訴訟費用は、被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨

第二当事者双方の主張

以下に記載するほか、原判決事実摘示第二のとおりであるから、これを引用する(ただし、(一)原判決五枚目裏二行目「仮りに」から四行目「したとしても、」までを「ところで、被告は、昭和四〇年七月三一日付で昭和三六年度分についての更正処分につき所得金額三、〇八五、六九一円、留保所得金額一、〇〇八、〇〇〇円、法人税額一、一七三、三二〇円、重加算税額一六〇、五〇〇円とする旨の再更正処分(以下本件再更正処分という。)をした。そこで、仮りに本件更正処分のうち昭和三六年度分についての更正処分が本件再更正処分により消滅したとしても、」と改め、(二)原判決八枚目表九行目および同裏三行目の「奈良信用金庫」をそれぞれ「奈良市信用金庫」と改め、(三)原判決一二枚目裏八行目の末尾に「同(四)の事実は否認する。同(五)の事実中被告が本件再更正処分をしたことは認めるが、その余は否認する。」を加え、(四)原判決二八枚目表八行目「(2)」を「〈2〉」と改め、(五)原判決二九枚目表一一行目と末行の間に「(四)以上のうち各年度の別口利益分については、原告が課税標準または法人税額の計算の基礎となる事実を隠ぺいしまたは仮装し、その隠ぺいまたは仮装したところにもとづいて申告書を提出したものであるから、本件各更正処分または本件再更正処分により更正または再更正された所得金額から申告所得金額を控除した分のうち別口利益分については重加算税が賦課されることになる。」を加える。)。

一  控訴人

1  本件の各更正処分および再更正処分には通知書に処分理由の附記が具体的になされていない違法がある。

法人税青色申告書による所得の確定申告については、帳簿書類を調査し、その調査により所得の計算に誤があると認められる場合でなければ更正は許されず、かつ、その更正通知書には更正の理由を附しなければならない(本件各更正処分については昭和四〇年法律第三四号による改正前の法人税法三一条一項、三二条、本件再更正処分については右改正後の法人税法一三〇条)。しかるに、本件各更正処分および再更正処分の通知書には、所得金額、留保所得金額、法人税額、納付の確定した当期分の基本税額、差引法人税額、重加算税額等の各欄に数額が示されているだけで、更正の具体的根拠の記載を全く欠いている。一般に法が行政処分に理由を附記すべきものとしているのは、処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服の申立に便宜を与えるためであるから、その記載を欠く本件各更正処分および再更正処分は、取消を免れぬものである(最高裁昭和三八年五月三一日判決・民集一七巻四号六一七頁)。これらの処分については控訴人の申立にもとづき再調査の決定および審査の裁決を経由しているが、法人税青色申告についてなされた更正処分通知書の理由附記不備の瑕疵は、後日の再調査決定および審査裁決において処分の具体的根拠が摘示されても遡つて治癒されるものでない(最高裁昭和四七年三月三一日判決・民集二六巻二号三一九頁、同昭和四七年一二月五日判決・民集二六巻一〇号一七九五頁)。

被控訴人は、本件各更正処分と同日付で控訴人に対し青色申告書提出承認の取消処分をなしたのであるが、右の結果現実に青色申告書にもとづいてなされた確定申告にかかる本件各更正処分が白色申告書に基く確定申告にかかる更正処分に転化したということはできない。青色申告書提出承認取消処分と更正処分とは別個の行政処分であつて、両処分の通知が同時になされた場合でも前者が後者に先行しているということはできず(ことに本件の事案では、青色申告書提出承認取消処分の通知書の番号が奈良法(通)第三六一号、昭和三三年度分の更正処分の通知書の番号が同第三六〇号となつており、この点ではむしろ後者が前者に先行している。)、両処分の通知書にはそれぞれ具体的な理由附記を要するのである。しかも本件の青色申告書提出承認取消処分の通知書には、「法人税法第二五条第八項第三号に掲げる事実に該当します。」としか理由が附記されておらず、取消の基因となつた具体的事実の特定摘示を欠いているから、右処分は違法であり(最高裁昭和四九年四月二五日判決・民集二八巻三号四〇五頁)、無効といわねばならない。

なお、この点につき、被控訴人は、本件各更正処分および再更正処分がいわゆる白色申告書にもとづくものであり、更正等の理由附記を求める規定はないから、手続上瑕疵はない、と主張する。しかし、本訴のように青色申告書提出承認取消処分の取消が訴訟物に加えられていない場合、そのことをもつて現実に青色申告書にもとづく本件各更正処分および再更正処分を白色申告にもとづくものということ自体不自然であるばかりでなく、青色申告書提出承認取消処分に理由附記欠缺・不備の違法があり、本来右承認取消処分が取消されるものであるのに、出訴期間を経過したから白色申告にもとづくものと解するのは明らかに不当である。

2  本件各更正処分および再更正処分には昭和四〇年法律第三四号による改正前の法人税法九条一項違反の瑕疵がある。

被控訴人は、いわゆる財産法にもとづき、控訴人には別口預金、架空借入金、架空未払金、仮払金などの隠ぺいがあるとし、簿外資産の存在を前提として本件各更正処分および再更正処分に及んだものである。しかし、一事業年度における純益の計算法としての「損益法」と「財産法」との相違は、前者がその年度に発生した利益および損失を各項目につき原因を確めて集計するのに対し、後者が期末の純財産高から期首のそれを差し引いた残額を純利益とするにあるが、前掲旧法人税法の規定は、当該事業年度の所得計算につき損益法によるべきものとしていると解されるから、被控訴人が単純に財産法に準拠して控訴人の所得を計算したのは違法といわねばならない。

3  被控訴人のなした本件各更正処分および再更正処分は、控訴人につき各事業年度においていわゆる別口利益金が存在したとの認定に立脚しているところ、右の設定が誤であることについて、控訴人は原審における主張のほか、さらに次のとおり附加する。

(一) 被控訴人は、控訴人が旅館業者として修学旅行団体客、一般団体客、個別宿泊客等を取り扱い、毎日のように現金収入を得て簿外金捻出の源泉としたと指摘しているが、これは、旅行斡旋業者を経ない飛び込みの宿泊客からの俗に「小花」といわれる収入を、裏付け調査もしないまま想定しているもののようである。しかし、控訴人は、主として修学旅行等の団体客を宿泊させることを営業の目的とし、これを収入の中核としているものであるから、いわゆる小花収入を簿外金として秘匿したとしても、その額はさしたるものでなく、これを加算した各事業年度の所得額は、とうてい本件各更正処分および再更正処分において認定されたそれに達するものでない。試みに本件各更正処分および再更正処分で認定された控訴人の各事業年度の所得額(ただし、審査決定で取り消された分を除く。)を中小企業庁編「中小企業の経営指標」(甲第三〇ないし第三二号証)に記載されている営業利益率で除して当期売上高を逆算すると、昭和三三年度分が三〇、一三八、七三九円(1,748,050円÷0,058)、昭和三四年度分が二九、一三七、八一八円(2,564,128円÷0,088)、昭和三五年度分が一六、二三五、五七三円(1,104,019円÷0,068)、昭和三六年度分が七一、七六〇、二五五円(3,085,691円÷0,043)となるが、このように莫大な売上高があつたと考えることは、およそ現実ばなれした想定である。

(二) 一般宿泊旅館における売上高に対する材料仕入費の割合が三〇%前後であることは、旅館業界における常識であり、公知の事実である。その割合が三〇%を余りにも超過するようなことがあれば、簿外の売上の可能性を示唆するものと考えられるが、その割合が三〇%に近接しておれば、その簿外売上はないという一つの指標になりうるのである。

甲第三号証の一ないし四に添付されている損益計算書にもとづいて控訴人の各事業年度における売上高に対する材料費をみると、次表のとおりであつて、右の割合はいずれも三〇%前後を示しており、控訴人が簿外売上をした形跡は全くないのである。

昭和三三年度 昭和三四年度 昭和三五年度 昭和三六年度

期首たな卸 一五、二四七円 六、八六八円 六、八九四円 八、九〇八円

仕入 一、四六五、五一五円 二、一五八、七九七円 三、二七八、三二〇円 三、九〇六、五九五円

期末たな卸 六、八六八円 六、八九四円 八、九〇八円 五、四九四円

当期純仕入 一、四七三、八九四円 二、一五八、七七一円 三、二七六、三〇六円 三、九一〇、〇〇九円

当期売上高 五、三四七、三七九円 八、〇二四、七二〇円 一〇、五四四、二六七円 一二、九八三、七二〇円

仕入の売上に対する割合 二七・五六% 二六・九〇% 三一・〇七% 三〇・一一%

(三) 被控訴人は、控訴人が代表取締役とその家族によるいわゆる同族会社であるから、簿外売上金を容易に作り出すことができたというが、根拠に乏しい主張である。旅館業界は、料理飲食等消費税賦課のため公給領収書の使用が義務づけられており、あえて簿外売上金を捻出しようとすれば、公給領収書の不使用につき客の了解を求め、税務署への通報の危険をおかさねばならない。経営上も、簿外売上金に対応する原料仕入等の経費を本勘定外で処理すべく、取引業者にその旨依頼しなければならないが、これは容易に了承の得られない事柄であり、簿外売上金発覚の端緒となる危険を伴うものである。

(四) 砂田浩、尾田竜一、村上金作、田口明宏、秋月金雄各名義の預金が控訴人に帰属するという被控訴人の主張も、理由がない。控訴会社代表取締役の浅川実は、個人として昭和三二年八月三〇日現在において株式会社南都銀行本店に、

(1) 昭和三二年四月二二日預入、秋月好子名義(番号AR五五八一)、五〇〇、〇〇〇円

(2) 同年五月二三日預入、若山健介名義(番号AR五五七八)、五〇〇、〇〇〇円

(3) 同年同月同日預入、若山好子名義(番号AR五五七九)、五〇〇、〇〇〇円

(4) 同年同月同日預入、秋月圭介名義(番号JAR五五八〇)、五〇〇、〇〇〇円

(5) 同年同月二五日預入、無記名(番号二九三)、一、〇〇〇、〇〇〇円

(6) 預入年月日不詳、石平勝蔵名義(番号AT九二四八)、三〇〇、〇〇〇円

(7) 預入年月日不詳、北原大造名義(番号AR五八三一)、一、〇〇〇、〇〇〇円の計七口の期間一年とする定期預金口座を有していた(甲第二二、第二三号証)。そして、右(1)ないし(5)の預金は、昭和三三年六月五日秋月圭介名義、三、〇〇〇、〇〇〇円の一年定期預金にまとめられて継続し、その後も昭和三四年六月一二日(起算日は同月五日)から秋月圭介名義ほか九口各三〇〇、〇〇〇円の一年定期預金にして継続し、さらに昭和三五年六月五日から同じく秋月圭介名義ほか九口各金三〇〇、〇〇〇円の半年定期預金にして継続している(甲第二三号証)。

被控訴人が控訴人に帰属すると主張している前示各架空人名義の預金は、右定期預金の利息が田口明宏名義の普通預金に組み入れられているなどすべて右浅川実個人の預金が資金源となつているのである。浅川実は、時にこれら架空人名義の預金から控訴人の債務(その大口は、株式会社大同建設に対する建築請負代金債務である。)の立替払をしたようなこともあるが、その外形からしてこれらの預金が控訴人に帰属するものと誤認してはならない。

(五) 控訴人は、昭和二八年四月二一日にようやく営業を開始したもので、戦前からの伝統を有する他の旅館業者に仮して営業をなすには不利な立場にあるのみならず、その国鉄奈良駅前という立地条件は、奈良の観光がおおむね近鉄路線や観光バス路線を中心に行われるという近年の傾向にかんがみ、決してすぐれたものではない。被控訴人は、本件訴訟において管内同業者間の権衡調査の内容をあえて明らかにしないが、これが明らかになつておれば、控訴人が奈良市内の旅館業者中ではかなり低位にあり、各事業年度において被控訴人の主張するほどの収益をあげていたものでないことも判然としたであろう。

二  被控訴人

1  被控訴人の主張1は争う。

被控訴人は、本件各更正処分と控訴人に対する青色申告書提出承認取消処分とを同時に告知したので、この場合後者の効力発生が前者のそれに先行するものと解すべきである(控訴人は、昭和三三年度分の更正処分の通知書の番号が青色申告書提出承認取消処分の通知書の番号より若いことを指摘するが、これは、単に事務整理上のものであつて、両者の効力発生の前後に影響があるものでない。)。控訴人は、本件の青色申告書提出承認取消処分が通知書に取消の基因となつた具体的事実の特定摘示を欠いているから無効であるというが、右の瑕疵は、せいぜい取消原因となるにとどまり、かつ、その取消を求めるについてはすでに出訴期間が経過しているから、右取消処分の効力を争うことは許されない。そうすると、被控訴人のなした本件各更正処分および再更正処分は、青色申告書提出承認の取消後になされた白色申告書による所得の確定申告についての更正処分と同視し得るものといわねばならないが、この種の更正処分の通知書には具体的処分理由の附記が法律上要求されていないのであるから、本件各更正処分および再更正処分が通知書中の右理由附記の欠除の故に違法と認むべきではない。

2  控訴人の主張2は争う。控訴人主張の昭和四〇年法律第三四号による改正前の法人税法九条一項は、「内国法人の各事業年度の所得は、各事業年度の総益金から総損金を控除した金額による。」というのであるところ、被控訴人が本件各更正処分および再更正処分において認定した控訴人の別口利益は、まさに右規定にいう総益金に含まれるものであるから、控訴人の右主張は根拠がないものといわねばならない。

3  控訴人の主張3は争う。

(一) 同主張(二)にいう三〇パーセントという数学自体が根拠に乏しいうえ、控訴人が立論の基礎とする損益計算書自体の記載の正確性に問題がある。さらに、被控訴人が別口預金と主張する金額を単純に売上高とみてこれを確定申告書添付の損益計算書の売上高に加算してその金額を材料仕入費と比較するというやり万は当をえていない。被控訴人は、各事業年度末現在の預金残高を別口利益金とみてこれを各事業年度の所得に加算したものにすぎない。もし、控訴人のいうように仕入割合を出すとすれば、このような残高の計算ではなく、そもそも残高が出るに至つたもととなつた預金の全預入、払出の金額を収益、経費にそれぞれ還元して、そのうえで売上高と仕入高との比較をしなければならないのである。

(二) 控訴人は、旅館業者には簿外売上金を作り出すことを困難ならしめる牽制の事情があると主張するが、それにもかかわらず現実に脱税行為がなされることは、周知の事実であるから、右の主張は、失当である。

(三) 控訴人は、被控訴人主張の別口預金につき資金源が明らかでないことを攻撃するが、資金源が判明しないということは、必らずしもその預金が控訴人に帰属しないことを意味するものでない。

(四) 控訴人主張にかかる株式会社南都銀行本店における七口の定期預金口座の存在については、被控訴人の知るところでないが、もしそうした定期預金が存在したとしても、その利息が田口明宏名義の晋通預金に入金されたというような主張事実は、甚だ不自然であつて、認めることができない。

(五) 控訴人の経営する旅館の国鉄奈良駅前という立地条件は、奈良公園や猿沢の池にも近く、かなり恵まれたものである。

第三当事者双方の証拠

以下に記載するほか、原判決事実摘示第三のとおりであるから、これを引用する(ただし、(一)原判決二九枚目裏九行目「第一四号証」の前に「第一三号証、」を加え、(二)三〇枚目表二行目冒頭の「め」の次に「(第八ないし第一〇号証の各一ないし四、第一一号証については原本の存在も認める。)」を加え、同六行目「第八号証の一乃至四」、同六行目から七行目にかけての「第九号証の一乃至四」、同七行目「第一〇号証の一乃至四」の次にそれぞれ「(いずれも写)」を加え、同行「第一一号証」の次に「(写)」を加え、同一一行目「第二六号証」の前に「第二五、」を加える。)。

一  控訴人

1  甲第二二ないし第二四号証、第二五号証の一ないし三、第二六号証、第二七号証の一、二、第二八ないし第三二号証を提出。

2  当審証人楳生真玄、同藤原晃、同嶋仲尊男、同中井英一、同浅川浩の各証言を援用。

3  乙第四一号証、第四二号証の一ないし三の成立は認める。

二  被控訴人

1  乙第四一号証、第四二号証の一ないし三を提出。

2  甲第二二ないし第二四号証、第二五号証の一ないし三、第二八、第二九号証の成立は不知、第二六号証、第二七号証の一、二、第三〇ないし第三二号証の成立は認める。

理由

一  当裁判所の判断は、以下に記載するほか、原判決理由中の説示のとおりであるから、これを引用する。

二  原判決理由の付加訂正

1  原判決三〇枚目裏一一行目「各事実」の次に「および同(五)の事実中被告が本件再更正処分をしたことは」を加える。

2  原判決三一枚目裏二行目「など」を削る。

3  原判決三二枚目表一〇行目「(昭和」から一一行目「参照。)」までを削り、末行「再更正前に」から同裏二行目「ては、」までを削る。

4  原判決三四枚目裏九行目の冒頭に「原本の存在および成立に争いのない」を加え、同行「乙第一〇号証の一」の次に「、原審証人中井英一の証言により真正に成立したと認められる乙第二八号証の三」を加え、末行「二三日」の次に、「尾田浩名義定期預金は昭和三三年四月一七日、秋月金雄名義定期預金は同年九月一六日」を加える。

5  原判決三五枚目表一行目末尾の「証」の前に「原審」を加え、三行目「五月」を「六月」と改め、六行目「定期預金は」の次に「昭和三四年七月三日」を加える。

6  原判決三五枚目裏一行目「第八号証」から二行目「第一一号証」までを削り、五行目「第三〇号証」の次に、「原本および成立に争いのない乙第八号証の一乃至四、第九号証の一乃至四、第一〇号証の一乃至四、第一一号証」を加え、五行目「証人」の前に「原審」を加え、七行目「証人」の前に「原審および当審」を加え、九行目「証人」の前に「原審および当審」を加え、同行「原告」の前に「原審における」を加える。

7  原判決三六枚目表二行目「こと、」の次に「その商号は奈良観光ホテルというのであつて、昭和三四年一月に新館をもうけたが、新館建築後の客室数は合計二八室(三〇帖一室、一〇ないし一九帖九室、六ないし九帖一七室、三帖一室)であつたこと、」を加える。

8  原判決三八枚目表八行目「八八二、四〇〇円」を「八八六、七〇〇円」と改め、九行目「九一三、四〇〇円」を「九五一、七八三円」と改め、同行から一〇行目にかけての「一、〇七三、六七三円」を「一、〇〇八、〇九〇円」と改める。

9  同裏末行冒頭の「金源は」の次に「、」を加える。

10  原判決三九枚目表二行目「問わず」の次に「、」を加え、四行目「(昭和」から五行目までを削る。

11  同裏五行目「その様式ならびに趣旨」を「原審および当審証人嶋仲尊男の証言」と改め、六行目「証人嶋仲尊男の」を「同」と改める。

12  原判決三九枚目裏「証人嶋仲」の前に「原審および当審」を加える。

13  原判決四一枚目表一〇行目「昭和三三年度」の前に「弁論の全趣旨によれば、」を加え、末行「は当事者間に争いのない」を「が認められる」と改める。

14  同裏四行目「昭和三四年度」の前に「弁論の全趣旨によれば、」を加え、六行目「一月」を「一〇月」と改め、一〇行目「については、」から一一行目「みなす。」までを「が認められる。」と改める。

15  原判決四二枚目裏二行目「昭和三五年度」の前に「弁論の全趣旨によれば、」を加え、五行目「若山文子」および六行目「尾田竜一」の次の「、」をそれぞれ削り、一一行目「については」から末行までを「か認められる。」と改める。

16  原判決四七枚目表九行目「昭和三五年事業年度」を「弁論の全趣旨によれば、昭和三六年度」と改め、一一行目「については」から末行までを「が認められる。」と改める。

17  原判決四八枚目九行目「三四二、六七〇円」を「二四二、六七〇円」と改める。

18  原判決四九枚目表八行目と九行目の間に左記を加え、九行目「七」を「八」と改める。

「七、以上認定の事実によれば、各事業年度の別口利益分については、控訴人が課税標準または法人税額の計算の基礎となる事実を隠ぺいし、その隠ぺいまたは仮装したところにもとづいて申告書を提出したものであるから、本件各更正処分または本件再更正処分により更正された所得金額から申告所得金額を控除した分のうち別口利益分については昭和三七年法六七号による改正前の法人税法四三条の二により重加算税が賦課されることになる。それゆえ、被控訴人が本件各更正処分または本件再更正処分により控訴人に対し重加算税を賦課したことは違法の点はないということができる。」

19  原判決五〇枚目表(別表(一)の「昭和38年」を「昭和33年」と改める。

三  当審における控訴人の主張に対する判断

1  控訴人の主張1(本件各更正処分および再更正処分通知書に理由附記を欠く違法があるとの主張)について

本件各更正処分および再更正処分の通知書には、所得金額、留保所得金額、法人税額、納付の確定した当期分の基本税額、差引法人税額、重加算税額等の各欄に数額が示されているだけで、更正の具体的根拠の記載を欠いていることは、被控訴人の明らかに争わないところである。しかし、被控訴人が昭和三六年一二月二七日控訴人の昭和三三年度分以降の青色申告書提出承認の取消をするとともに、本件各更正処分をしたことは、当事者間に争いがない。そして、成立に争いのない甲第一号証および弁論の全趣旨に徴すると、被控訴人は、控訴人の備え付ける昭和三三年度分以前の帳簿書類に取引の全部または一部を隠ぺいしまたは仮装して記載する等当該帳簿書類の記載事項の全体について、その真実性を疑うに足りる不実の記載があると認定したので右取消処分に及んだものと認められるから、昭和四〇年法三四号による改正前の法人税法(以下「旧法人税法」という。)二五条八項後段により控訴人の本件各事業年度分の法人税にかかる青色申告書は、右不実の記載があつたと認められた時以後に提出したものとして(なお、最も古い昭和三三年度分についての申告日が昭和三三年一一月二九日であることは、当事者間に争いがない。)、青色申告書以外の申告書とみなされるのである。もつとも、前掲甲第一号証によれば、右青色申告書提出承認取消の通知書には「貴法人は、法人税法第二五条第八項第三号に掲げる事実に該当します」と記載されているだけで、右該当事実の具体的内容は摘示されていないことが明らかであつて、右取消処分は違法であるといわなければならないが、無効であると解すべき根拠はなく、控訴人が右取消処分に対して不服の申立、訴の提起をしていないことは、弁論の全趣旨に徴し明らかであるから、右取消処分は確定したものと認められる。

このように、本件各更正処分および再更正処分はいわゆる理由附記を欠いているが、本件各更正処分は青色申告書提出承認取消処分とともにされているのであつて、前記甲第一号証、いずれもその成立に争いのない甲第二号証の一ないし四、弁論の全趣旨によれば、右取消処分、本件各更正処分の各通知書は同時に控訴人に送付されたものと認められるから、このような場合取消処分が更正処分に先行してされたものと認めるのが相当であつて(もつとも、控訴人は、右取消処分の通知書の番号が奈良法(通)第三六一号であり、昭和三三年分の更正処分の通知書の番号が同第三六〇号となつていて、後者が前者に先行していると主張し、前掲甲第一号証、甲第二号証の一によれば右各通知書の番号が控訴人主張のとおりであることが認められるが、弁論の全趣旨に照らせば、右の番号は被控訴人内部の事務整理上のものにすぎないものと認められるから、これらの番号が叙上認定を左右するものということはできない。)、その通知を受けた控訴人は、青色申告書提出承認取消処分に対しては不服の申立をせず、本件各更正処分に対してだけ不服の申立をしたものであるから、控訴人は理由附記を必要としないいわゆる白色申告をしたものとみなされたものというべく、本件各更正処分に理由附記を欠くことによる瑕疵は治癒されたものと解するのが相当である(なお、本件再更正処分については、青色申告書提出承認取消処分ののちにされたことが明らかであるから、もともと理由附記を必要としないものである。)。

それゆえ、控訴人の主張1は採用することができない。

2  控訴人の主張2(本件各更正処分および再更正処分は旧法人税法九条一項に違反するとの主張)について

旧法人税法九条一項は「内国法人の各事業年度の所得は、各事業年度の総益金から総損金を控除した金額による。」と規定しているところ、被控訴人は、控訴人の別口利益金が各事業年度の総益金に含まれるとして所得金額を算出し、本件各更正処分および再更正処分に及んでいることが明らかであるから、右所得金額の算出方法に同条に違反する違法があるということはできない。

3  控訴人の主張3(被控訴人主張の別口利益がないとの主張)について

控訴人は、控訴人経営の奈良観光ホテルは主として団体旅行客を宿泊させていて、飛び込みの宿泊客が少なく、その立地条件も悪いから、とうてい被控訴人主張のような簿外の利益を上げることはできないなどと主張するが、いずれもその成立に争いのない乙第二九号証の一、二、第四一号証、第四二号証の一ないし三、原審証人嶋仲尊男、当審証人藤原晃、同浅川浩の証言、原審における控訴人代表者尋問の結果(証人浅川、控訴人代表者の供述中後記認定に反する部分は採用しない。)によると、奈良観光ホテルのある国鉄奈良駅前という立地条件は、近時私鉄やバスを利用する観光客が増加し、国鉄利用客が減少したことに伴つて、旅館業者にとり必ずしも有利なものとはいえなくなつているが、本件各事業年度当時としてみると、奈良観光ホテルは奈良市内の同業者間にあつて中位のものと目されていて、国鉄推せん旅館、日本交通公社協定旅館とされていたし、その経営は主として団体旅行客を対象とはしていたが、小口の一般旅行客も少なからずあつたことが認められるから、控訴人の主張は採用することができない。控訴人は、次に、控訴人が被控訴人主張のような所得をあげていたとし、「中小企業の経営指標」記載の営業利益率により逆算すると、例えば昭和三三年度においては三〇、一三八、七三九円という簿外売上があつたことになつて非常識であるというが、控訴人主張の利益率が本件に妥当するという根拠が明らかでないから、右の主張も採用できない。控訴人は、さらに、売上高に対する材料仕入費の割合にもとづいて甲第三号証一ないし四中の損益計算書の正確性ひいては本件更正処分等の更正の根拠のないゆえんを主張するが、控訴人が仮名の預金を有していると認められる等の上記の事実と対比すると控訴人が援用する右損益計算書の記載自体の正確性に問題があるといわなければならないから、控訴人の主張は前提を欠くといわざるをえない。控訴人は、また、当審において新たに浅川実に帰属するという七口の合計四、三〇〇、〇〇〇円の株式会社南都銀行本店の定期預金口座の存在を主張し、いずれもその方式および趣旨により成立を認められる甲第二二、第二三号証によれば、控訴人主張名義の定期預金が存することが認められ、当審証人浅川浩の証言中には控訴人の主張にそう供述があるが、昭和三七年提訴にかかる本訴において控訴人が右の定期預金に言及したのは昭和四九年二月一五日付準備書面が始めてであること、その他前認定事実と対比して、右供述はにわかに採用することができない。

四  そうすると、本件各更正処分および再更正処分には控訴人主張の違法事由がないから、控訴人の請求は排斥を免れない。よつて、原判決は相当で、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長判事 朝田孝 判事 富田善哉 判事 川口富男)

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